『ベイビーアイラブユーだぜ』無機質な世界観と喜怒哀楽の調和
『ベイビーアイラブユーだぜ』ちょっと語りたいぐらいいいところがたくさんあったので書く。
ストーリー構成、世界観、キャラクターへの視点などなど、語りたいことはたくさんある。
ストーリーをものすごくざっくり表現すると、ロッテのお菓子がいろんな人の人生に寄り添ってますよーという話(雑
主軸の話は男子中学生(たぶん)くんと女子高生(たぶん)ちゃんのボーイミーツガール。
まず引き込まれたのは世界観。もう最初の男子中学生くんの歩いてるだけのシーンで、画面への吸引力がすごい。
近未来感、ハイテク感、光沢感。特に光沢感、というかハイライトの役割がすごく重要で。
近未来感、ハイテク感という無機質さと、男子中学生くんの毎日をつまらなく過ごしているという感情を一瞬で密接に結びつけていて。作品の質感が瞬時に伝わってくる感じがすっごく良くて。
で、女子校生ちゃんが店を出ていったあとに思わず男子中学生くんが見惚れていて走って追いかけていくときの方向が、最初に歩いているときと真逆の方向になっているという構成が手堅く上手い。
そのボーイミーツガールのシーンが終わったあとに、ロッテのお菓子と、そこにいる人達が2〜3秒で、1カットで繋がれていく。
そこにいる人達はみんな喜怒哀楽があって、思わず彼らの物語を想像したくなるような構成になっている。結構な物量の物語と感情を矢継ぎ早に突っ込んで入れてくる感じが、映像のテンポの良さを出していて良かった。
この後にまた1カット、2〜3秒の続きのシーンが描かれるんだけど、その間に男子中学生くんと女子校生ちゃんの物語が挿入される。
男子中学生くんの夢(妄想)シーンで最初の出会いのシーンの繰り返し(同ポジション)がされるという、ここも手堅い構成。
それで、その後の1カット、2〜3秒のシーンがまた良くて。
全部さっきのシーンの次のカットっていう構成になっていて、前のシーンで観てる側が想像した物語にもう少しだけ想像力を与えるというか、これもまた描き過ぎない、構成の巧さを感じてしまった。
そして最後のシーン。
ここのシーンも最初のシーンとの逆方向を意識した画面構成が上手い。
男子中学生くんがあげたガーナチョコを女子校生ちゃんが受け取るけど、男子中学生くんと分け合っちゃうという展開。
ラブストーリーとして気持ち良くは終わらないぜ、という物語上の演出が憎くて、それが心地良かった。
この作品の監督は松本理恵さん。『京騒戯画』『血界戦線』好きの自分としては、最後のスタッフロールを見て少し感極まってしまった。
松本理恵さんが描く無機質な世界と、その中でのキャラクターの感情の揺れ動き、高ぶり。この作品を観て、自分が松本理恵さんの作品で好きなところはここだったんだと気付けた。
ショートフィルムの醍醐味は短い時間の中での情報整理の仕方。
その圧倒的な上手さを見せつけられた作品だった。
松本理恵さんの次回作を楽しみにしながら、定期的に見返したいと思う。
【余談】
・男子中学生くんと女子高生ちゃんのコーディネート。
めちゃくちゃセンスのいいYラインコーデで、めちゃめちゃかっこいい&かわいい。
男子中学生くんはマフラー+アウター+しっかりとテーパードしたパンツ
さらにプラスでイエローのハイカットスニーカー。
ハイテクな世界観に負けないコーデのかっこよさでこの男子中学生くんのデザインだけでも相当に作り込まれていると思うし、観てるだけで満足感が高いと思う。
そして女子高生ちゃんのコーデ
ボリューム大きめマフラー+ショート丈コート+制服ミニスカ+大きめトートバッグ。
女子高生のこのコーデは定番感あるけど、Yラインコーデとしては最強なんじゃないかと思う笑
その上、この子の顔デザインをあざとめにしてるところは...ちょっとずるいと思う笑
・女子高生ちゃんの友達。
まさかのギャルという設定。
そこから推理してくと、この子は恋愛に対しては決して固くない性格で、ノリの軽さを想像させる。
だから男子中学生くんの妄想の中の彼女は決して現実とは乖離していないのである。
女子高生ちゃんのキャラ設定の1行目は「男子ウケ抜群」「あざとい」で間違いない。