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アニメの演出、スタッフさんに興味があります。

『アイドルマスター シンデレラガールズ』 第20話 アイドル達の迷いと正直さの描写について

デレマス第20話を観終って。話が大きく動いて、初見はその勢いに戸惑いを覚えてしまった。けれど、アイドル達が迷っていく中でも、自分の気持に嘘をつかないで正直になる姿の描写が素晴らしくて、見ごたえのある話数だった。冒頭の美城常務の「アイドルの自主性を尊重する」という言葉が見事に反映されている内容だった。


新ユニットの結成に戸惑う凛、加蓮、奈緒。凛は新ユニットに加入するかどうかを悩んでいる一方で、加蓮、奈緒は凛にユニットへの加入を強要していいかを悩んでいる。その中でも加蓮は凛と一緒に活動したい、奈緒は凛に自分達の気持ちを押し付けたくないと主張している。けれども、歩道橋のシーンで加蓮は自分の強い気持ちを奈緒にぶつける。それを受けて、奈緒が本当は凛と一緒がいいという自分の気持ちに正直になっていく姿が良かった。加蓮が階段を踏みしめる、加蓮が階段の上から見下ろす、そしてそれを奈緒が見上げる、このカット割りがキマっていて、二人の気持ちの移り変わりがしっかり描写されていて良かった。


そしてラブライカの2人。この話数は何といってもこの2人が良かった。
アナスタシアは文香の「読んだことのない本のページをめくるみたいにドキドキして」という言葉を聞いて新ユニットで挑戦する気持ちを後押しされる。そしてその後のシーンで、そこに蘭子の「挑戦するのは楽しいから」という言葉が重ねられる。同じような描写が重ねられているけれど、この描写の積み重ねでアナスタシアの迷いが加速していく姿だけじゃなくて、アナスタシアが文香、蘭子の言葉を受け入れることができる懐の深さもちゃんと描写されていると感じた。だけど、他人の言葉を受け入れても、一人になって自分の中で考えて答えを出す。それがその後の自室のシーンで強調されていたと思う。このシーンの暗過ぎるくらいの部屋の暗さが印象的だった。


アナスタシアだけではなく、美波の懐の深さもそれ以上に表現されていた。
噴水のシーンでアナスタシアが相談しなかったことを怒っていないと否定してみせる美波。アナスタシアの決意だけではなくて、それを話せなかったことも一緒に受け入れていることで、美波の懐の深さがよく表現されているシーンだと思う。このシーンの光の柔らかさとか、コスモスが咲き誇っている感じも素晴らしかった。


ラブライカの2人とは対照的に、お互いを受け入れられなかった姿が描かれていたのがnew generationsの3人。けれども、この話数ではシリーズの中でも3人のらしさが一番よく表現されていたと思う。
凛は卯月と未央の2人に新しいプロジェクトのことを打ち明ける。それを聞いて凛と対立する未央。この間に卯月の不安そうな表情や詰まった声が挿入されていて、卯月が2人のやりとりを聞いている中でも必死に何かを考えている姿が印象的だった。その後に卯月が未央がにどう思っているのかと問われて、卯月はわかりません、と答える。このわかりませんという言葉の直前に卯月が凛を見る主観のカットが入って、卯月が凛の気持ちを思い遣る姿も細かく表現されていたのが嬉しかった。だからこそ卯月が様々な想いの中で発せられたわかりません、という言葉にも説得力があった。未央に助けを求められても、卯月が取り繕わないで、取り繕うこともできずに「わかりません」と言う様は、迷いの中でも卯月の素直さ、正直さが出ていて、卯月のらしさがシリーズの中でも色濃く表現されているシーンだと感じた。


ED中のシーンも良かった。
卯月、未央、凛の3人の自室のシーン。他の話数でも、キャラが自室で一人になるシーンは自分の気持と向き合う姿の表現として度々使われてきた。この3人のカットが連続で繋がれているのは、今後のシリーズの中で、彼女たちがようやく自分自身と向き合い始める契機となるカットに思えて感慨深かった。3人とも、画面上では別の方向を向いているのもポイントが高い。


最後のアナスタシアと未央のソロデビューの発表も気持ち良かった。アナスタシアのソロデビューに対して美波が大賛成、と言い放つ姿は本当にかっこ良かった。美波じゃないと言えないセリフをうまく当てはめてきたなと思った。自分自身でソロデビューを宣言した未央もかっこいい。数分前のシーンで「この3人だからやってこれた」と言っていた子が、明るい顔でソロデビューを宣言する。唐突な印象もあったけれど、シンデレラプロジェクトの活発さの部分を背負っていた未央の、未央らしさが象徴されていて素晴らしかった。


第20話はそれぞれのキャラクターの自分らしさが引き出されて、自分が好きな描写で溢れていて本当に嬉しかった。これ以上の出来上がりの話数が来ることを期待させる展開になったので、今後も毎週楽しみにしてデレマスを観ていきたい。